初めて支払督促の申立てをする時のポイントと注意点とは?

貸したお金を返してもらえない時、契約した仕事が終わったのに請負代金を払ってくれない時、契約相手から突然契約を解除された時など不当な扱いを受けたとき支払督促を申立てると確実に債権を回収出来ます。手続は意外と簡単。初めて自分で支払督促を申立てる方法を解説します。

1.支払督促ってどんな時使うの?

2.支払督促の申立て方法

3.支払督促の通知が発布された後は?

自分が正しければ積極的利用しよう

1.支払督促ってどんな時使うの?

支払督促という言葉に馴染みのない人は多いと思いますが、この制度を知っていれば日常で不当な扱いを受けたとき自分を必ず守ってくれると思います。

支払督促は裁判所を通して不当な扱いをした相手方に損害金を請求する制度です。自分が不当な扱いを受けたと感じた時は検討してみるのをお薦めします。

約束した事を守ってもらえなかった時

生活上でもビジネス上でも重要な約束をする時は、契約書を作成する事が多いと思います。それはお互いが相手方に対して、しっかり約束した事を守ってもらうためです。

しかし、約束して契約書を交わしても必ずしも守ってくれるとは限りません。そして、約束を守ってもらえなかった事で、自分に大きな損害が及んだ時はとても損な気持ちになると思います。

だまされたと感じる人もいるかもしれません。そんな時は裁判所に支払督促の申し立てをしましょう。損害分の金銭を要求する督促を裁判所を通して発布してもらいます。

明らかに不当な扱いを受けた時

仮に契約書を結んでいなくても、明らかに不当な扱いを受けたことで大きな損害が発生した場合も、支払督促の申立てができます。支払督促を申立ては、民法を根拠法として行う事が基本になります。

市民同士のトラブルや契約行為は民法を一般法として考え、その上で個別の特別法を当てはめて考えていく事になります。特別法には労働法や借地借家法、貸金業法など様々あるので、事件内容によって必要な個別の法律に照らして違法行為がないか見ていくとよいと思います。

違法行為があればそれを根拠法として申立てる事が出来ます。

働いたのに給与が正確に支払われなかった時

労働契約を結んで労働者として働いたのに正確に賃金が支払われなかった場合、労働法を根拠に申立てる事が出来ます。

日本の労働法は実はかなり労働者を保護した内容になっているので、自分が不当に感じた時は、なんらかの法律に違反している可能性が大きいです。労働者だと団体で行動する必要があると思っている人がいるかもしれせんが、けっしてそうではありません。

個人で会社側に対して支払督促を申立てる事は可能です。むしろ団体で行動すると、損害額も大きくなり裁判所側も慎重に判断するので、時間がかかってしまうかもしれません。

個人の申立てであれば事件内容の把握がしやすく、違法行為も特定しやすいので、時間がかからなくて済みます。

2.支払督促の申立て方法

支払督促は相手方の住所を管轄する簡易裁判所に申立てます。なので、最低限相手方の住所がわかっていないと申立てる事ができません。会社であれば本店の所在地が住所になります。

もし、申し立てを検討する段階になったら必ず相手方の住所を把握しておくことにしましょう。管轄の裁判所へは、直接行って申立書をもらう事をお薦めします。

申立書の簡単な書き方を教えてくれるので、その時わからないことは聞いておきましょう。

裁判所を通して申立てる

支払督促は簡易裁判所に申立てますが、裁判所の職員は、必要最低限の案内しかしてくれません。申立書の簡単な書き方や、申立てるのに必要な書類(相手方が会社の場合、登記簿謄本が必要です)、手続に係る印紙代などです。

裁判所はあくまでも中立の立場なので、申立人に一方的に利益になるような法律的な案内は出来ません。不法行為と認める根拠法や、その法律が正当に適用出来るかは、法律事務になりますので、あくまでも自分で記載しなければなりません。

このあたりが、支払督促の制度が一般の人に扱いにくくしている最大の原因だと思われます。

審査は書類審査なので証拠提出は不要

支払督促の審査は裁判所の書記官が書類で審査します。提出した申立書に記載されている内容だけで、支払督促を発布するか決めます。証拠書類は必要ありません。但し、契約書などが手元に、あったほうが申立書の記載がしやすので、出来るだけ事前に契約書を結んでおくことをお薦めします。

また、反論されると、裁判になるので、この時は証拠書類の提出が必要になりますので、契約書があれば、有利に裁判を進める事が出来ます。支払督促だけで事件が解決すれば時間があまりかからないので、相手方に明らかに違法行為があると思った時は、まずは支払督促を検討する方が良いでしょう。

相手方も裁判で争っても勝てないとわかっていたら無理に反論はしてこないはずです。

利用するには最低限の法律知識は必要

支払督促の申立書を提出しても必ず支払督促が発布される訳ではありません。裁判所の書記官が理由があると認めない限り発布されません。

書記官は法律的にどんな違法行為があって、そのことがしっかりと認められる根拠法が存在するのかを審査します。なので、事件の概要だけでなく、法律の条文を具体的に示す必要があります。

法律の専門家であればそれほど難しい事ではないのですが、法律の素人であると自分だけでするのは難しいかもしれません。この時法律に詳しい人で協力してくれる人が身近にいたら積極的に頼ってみましょう。

3.支払督促の通知が発布された後は?

無事支払督促が発布されたら、8割方こちらの勝ちとみてよいでしょう。

というのも裁判所はいい加減に書類だけで審査しているのではなく、記載されている事実内容が真実であるという前提で、法律上の違法行為が認められるという根拠がしっかり示されているので、支払督促を発布しています。

なので、事実に大きな食い違いがなければ特に問題がないということになります。

基本は待ちの姿勢でOK

発布された後は相手の出方を待っていれば良いことになります。反論してくれば裁判になります。金額が低ければ簡易裁判所で即日結審します。

反論してこなくて、相手方が何も反応してこなくても焦る必要はありません。支払督促は発布から1ヶ月経過すると裁判の確定判決と同じ効力が発生しますので、時間がたてばたつほどこちら側が有利になります。

基本的には無理にこちらから連絡するような事はせずに待っていましょう。余計な事を考えてストレスをためる必要はないのです。

発布されて1ヶ月たてば、強制執行できる

先ほども説明しましたが、支払督促が発布されて1ヶ月たてば、確定判決と同じ効力をもちます。この後は強制執行の申立てが出来るので、こちらから強制的に債権の回収手続を行うことが出来ます。強制執行の効力があれば相手の財産を差し押さえることが出来ます。

なので、1ヶ月経過したら強制執行の申立てをして相手方の資産を調べて、財産を差し押さえます。財産を差し押さえることが出来れば確実に債権を回収出来ます。

相手方にはもはや反論する機会はないので、確定判決の内容に従わざる終えなくなります。

反論された時はどうすればいいの?

支払督促が発布されて、反論されたら、裁判になります。請求金額が60万円以下であれば少額訴訟といって即日で結審します。控訴する事が出来ないので、これが確定判決となります。

60万円以上で140万円以下の場合、通常訴訟となり、判決に不服の場合控訴する事が出来ます。この通常訴訟になると、審議が長引くことになるかもしれません。

しかし、自分に非がないのであれば、争った方が長い目みると良いと思います。裁判では証拠書類の提出が求められますが、刑事裁判と違って、証拠の厳密性について、細かく審査されません。証拠が無い場合も含めて、社会通念上正当と思われる事に関しては認めてもらえるので、冷静にルールに則って自分の主張をした方が良いと思います。

自分が正しければ積極的利用しよう

以上が支払督促の一般的な流れですが、特徴的なのは手続きにそれほど手間がかからないことです。裁判と違って、裁判所に何度も行く必要がないので負担がそれほどかかりません。実際に裁判所に行くのは、はじめに申立書を提出する1回だけでよいと思います。また、時間も1ヶ月程で債権を回収する事が可能です。迅速に手続が進むので、利用するのに便利な制度だといえます。

泣き寝入りは社会全体の損失にもなる

積極的に利用した方が良い理由はもう1つあります。不当な扱いを受けて泣き寝入りしていると、相手方を野放しにしてしまうことになります。ブラック企業や契約違反が当然のような世の中になってしまうことは、悪人を野放しにしてしまう事と同じです。

これでは社会全体にとっても大きな損害になります。悪い事をしたらそれなりのペナルティーをうけるのが当然です。スピード違反をしたら反則金を払うのと同じです。

同じ理由で、一定のペナルティーを科さなければ相手方はまた同じ事を別の誰かにします。それを防ぐためにも自分の正当性を主張して争うことが重要なことのように思います。

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