建設業許可申請の方法を行政書士がサクッと解説!
初めて建設業許可申請手続をする時は、必要な要件や用意しなければいけない資料がたくさんあります。建設業で独立を考えている方はしっかり申請方法を理解して手続しましょう。経営業務管理責任者や専任技術者になれる人の要件や建設工事の種類を事前に確認して手続しましょう。
1.建設業許可とは?
2.建設業許可申請の手続方法
3.建設業者のほとんどが中小企業
地道な努力と実績が評価される建設業界
1.建設業許可とは?
家を建てたり工事をしたりするのが建設業者ですが、建設業を営む場合、建設業許可を受けなければいけません。新規で建設業許可を取得するには、最低限必要な要件が定められています。
要件によっては数年前から準備していなければならないものもあります。許可の取得には計画的に準備して経歴などの事実を証明する資料を用意する事が重要です。
建設工事の種類は29種類ある
建設業許可は建設工事の種類ごとに取得します。建設工事の種類とは、例えば、家を建てる工事は建築一式工事と呼ばれます。道路工事は土木一式工事と呼ばれます。他にも、電気設備の工事を電気工事、配管工関係の工事を管工事、壁張りなどの内装関係の工事を内装仕上工事といいます。
これらの工事は全部で29種類あります。行おうとする建設工事の種類ごとに、許可を取得しなければなりません。複数の建設工事の許可を同時に取得する事も可能です。内装工事を専門とする建設会社が水道工事の許可を取得する事も可能です。
しかし、建設工事の種類ごとに、必要な要件を満たした経営業務管理責任者と専任技術者が必要になります。複数の建設工事業を営む場合、建設工事ごとに技術者がいないと許可を受けることは出来ません。
建設業許可の種類は12種類ある
建設業許可は500万円以上の工事を請負う場合、取得する必要があります。建築一式工事だけは1500万円以上の工事を請負う場合、取得が必要になります。500万円未満の工事であれば、無許可で工事を請負う事が出来るので、小規模の工事であれば必ずしも許可が必要という訳ではありません。
そして建設業許可は形態によって12種類あります。
大きく3つの区分に分ける事が出来ます。
- 大臣許可もしくは知事許可・・・営業所が2つ以上の都道府県にある会社は大臣許可、1つの都道府県内しか無い会社は知事許可
- 一般許可と特定許可・・・発注者から直接工事を請負い、その工事を、全ての下請契約金額合計で6000万円以上で下請けに出す場合は特定許可を取得しなければいけません。それ以外で工事を請負う場合は一般許可を取得します。この一般と特定の許可は同じ種類の建設工事で同時に取得出来ません。例えば塗装工事で一般許可を取得したら、特定許可では取得出来ません。他の種類の建設工事、例えば塗装工事以外の工事であれば特定許可を取得出来ます。
- 新規、更新、業種追加・・・今まで有効な建設業許可を受けていない業者は新規で申請します。建設業許可は5年が有効期限なので、5年たったら今度は更新で申請します。新たに別の建設工事でも許可を取得する場合は業種追加で申請します。
それぞれの区分であてはまる形で申請する必要がありますが、初めて建設業許可申請する場合、圧倒的に多いのが、知事許可・一般許可・新規です。独立したての建設会社は、それほど規模が大きくないので、元請け工事をする機会は少なく、仮に下請けに出してもそれほど大きな金額になりません。営業所も1つというのが一般的です。
経営業務管理責任者と専任技術者とは?
経営業務管理責任者とは法人の役員、個人事業の場合は事業主で、建設業の経営に関わり総合的に管理して業務を執行する者の事です。経営業務管理責任者は常勤でなければいけません。別法人に勤務しながら非常勤役員で建設業に従事していては認められません。
専任技術者とは建設工事の業務について専門的な知識や経験を持つ者で、営業所に常駐している者です。学歴、実務経験、資格などで要件を満たしている者がなれます。
国家資格である技能検定は、各都道府県に設置されている職業能力開発校に1,2年通えば受験資格が得られます。試験に合格して、建設会社に一定期間勤務して実務経験を積むと専任技術者になる事が出来ます。
2.建設業許可申請の手続方法
新規で建設業許可を受ける場合、主に5つの要件を備えている必要があります。そして、それらの要件を備えている事を証明する資料を提出します。
決められた書式の建設業許可申請書一式は各都道府県庁に直接行くか、もしくはホームページから入手出来ます。それらに必要事項を記入して、まとめて各都道府県庁に提出します。
また、申請書と一緒に建設業許可の手引きも役所で入手出来るので、それらを見ながら細かな要件を確認しましょう。
建設業許可を受ける要件
許可に必要な要件は以下です
- 経営業務管理責任者がいる事・・・なれる人の条件は一定期間(主に5年間)法人の役員や個人事業主で、建設業の経営に関わり総合的に管理して業務を執行した経験を有する者です。
- 専任技術者が営業所に1人以上いる事・・・学歴・実務経験・資格等でなれる人の条件が決まっています。
- 請負契約に関して誠実性がある事・・・法人の場合は役員、個人事業の場合は事業主が請負契約に関して過去に「不正な行為」「不誠実な行為」を行っていない事が必要です。
- 財産的基礎または金銭的信用を有している事・・・一般許可を受ける場合、「自己資本が500万円以上ある」、「500万円以上融資を受けられる」、「過去5年間に許可を受けて継続して建設業を営業した実績がある」これらどれかに該当すればよいとされています。
- 欠格要件に該当しない事・・・法人の場合は役員、個人事業の場合は事業主が過去に建設業法、建築基準法、一定の刑法などに違反していた場合、主に5年間経過していないと、欠格要件に該当する場合があります。
建設業許可申請書類一式を作成する
申請書類は数十ページあります。新規で建設業許可を受ける場合、提出が必要な書類が決められているので、それらに必要事項を記載します。
新規で申請する場合、工事経歴書や財務諸表など、更新申請よりも必要な書類が多くなります。経営業務管理責任者の経験や専任技術者の実務経験の証明書を作成する場合、勤務していた会社の捺印が必要なので、勤めていた会社に頼んで作成します。
確認資料を用意しよう!
新規申請で1番大変なのは、経営業務管理責任者と専任技術者となれる人の存在をしっかり証明する事です。要件をしっかり満たしているのかを確認するために資料を提出します。
実務経験を証明する資料は工事請負契約書や注文書等の写しを用意します。資格がある場合は合格証を、学歴は卒業証明書を用意します。また、両者とも常勤でなければいけないので、それを証明するために健康保険被保険者証などを準備します。
その他営業所の写真や所在地の地図が必要になります。会社としての実績を証明する場合は納税証明書を用意します。確認資料は各都道府県によって異なる場合があるので詳しくは各都道府県庁に問い合わせて確認します。
3.建設業者のほとんどが中小企業
日本の建設業者のほとんどが中小企業です。それぞれ得意分野の工事を持っていて、その特性を活かして営業しています。
建設業を営むには、まず現場で経験を積んで技術的スキルを持ちます。それぞれの職人が得意分野のスキルを持って独立するので、社員数人のような小さな会社がたくさんあります。
建設業で独立するには?
まずは建設会社に就職しましょう。就職する前に、大卒の学歴や技能資格などをあらかじめ取得しておくと、就職後、比較的早く専任技術者になる要件を満たすことが出来ます。もし、真剣に建設業で独立を考えているのであれば、出来るだけ早く勉強をして準備しておくと良いでしょう。
また、経営業務管理責任者になるには経営者としての経験が必要になります。大企業ではもちろん、中小企業でも簡単に経営に参画出来る訳ではありません。
もし経営者の経験がなく独立するのであれば、はじめの数年は無許可で建設業を経営する事です。請負金額が500万円未満であれば許可がなくても営業出来るので、そのような方法も検討しましょう。
元請けと下請け会社が協力して工事が行われる
大きな建設工事ほど複数の建設会社が参加しています。大企業が請負った工事を小さな会社に下請けに出します。小さな会社は得意分野の工事を請負って与えられた部分の工事だけを担当して工事を完成させます。
それぞれが独自の技術を持っているので、それらが複合的に合わさって1つの工事を完成させます。日本の建設業は伝統的にこのように元請けと下請けが相互に協力して工事を行っています。
元請け会社は工事を総合的に施工管理して、下請け会社を適切に配置し統制する役割を担っています。
年1回、決算報告を届出ることが必要
建設業許可を取得した後、年1回、会計状況を各都道府県庁に届出なければなりません。届出書には工事経歴書、工事施工金額、財務諸表、納税証明書などを添付します。これらの届出を怠ると、建設業許可の更新が出来なくなります。
もし、行っていない場合、更新申請の時に届出を行っていない年度分をまとめて一緒に提出する必要があります。また、会社の役員や本店などが変更して登記事項の内容が変わっていたら、その登記変更もしていなければいけません。
地道な努力と実績が評価される建設業界
以前に比べると建設業の需要は減ったと言われますが、建設業は日本の基幹産業です。いつの時代も必ず必要とされる仕事なのでなくなることはありません。建設業界で生きて行くには地道な努力で実績をしっかりと作る事です。それには時間もかかります。
しかし、工事を施工した経験は確実に評価されるので実績を重ねれば上を目指していけるのは確かです。一人前の職に就いて経済的にも恵まれた人生にするには建設業界はとてもやりがいのある業界だといえるでしょう。