とび職で外国人雇用できる作業とは?
建設現場で欠かせない「とび職」は、外国人の雇用も進んでいます。本記事では、技能実習や特定技能の制度をふまえ、外国人が従事可能な作業内容や注意点をわかりやすく解説します。
1.とび職における外国人雇用の基本知識
2.外国人が従事可能なとび作業一覧
3.雇用現場での注意点と実務対応
外国人とともに安心・安全な現場づくりを
1.とび職における外国人雇用の基本知識
とび職で外国人を雇用するには、技能実習や特定技能など在留資格制度の正しい理解が不可欠です。
この章では、それぞれの制度の違いや対象となる作業範囲、必要な手続きについて、初めての雇用でもわかりやすく解説します。
技能実習と特定技能の違いとは?
技能実習と特定技能は、どちらも外国人が日本の建設現場で働くための制度ですが、その目的や在留期間、就労の自由度が異なります。
技能実習は「技能の移転」を目的とし、実習計画に沿った作業のみが認められます。
一方、特定技能は「人手不足の解消」が目的で、一定の試験に合格すれば比較的広い業務に従事可能です。
とび職では、両制度とも雇用が可能ですが、それぞれの特徴を理解したうえで受け入れることが重要です。
【とび職における全作業一覧】(外国人雇用の可否関係なく)
1. 足場関連作業
- 枠組足場の組立・解体
- 単管足場の組立・解体
- 吊り足場の設置・撤去
- 次世代足場の設置・解体(くさび式など)
- 移動式足場の設置・操作(ローリングタワーなど)
- 足場部材の積み下ろし・運搬
- 墜落防止措置(親綱設置、安全ネット設置等)
2. 鉄骨建方作業
- 鉄骨の荷下ろし・仮置き
- 鉄骨部材の玉掛け
- 揚重機(クレーンなど)への合図
- 鉄骨の建方(柱立て、梁掛け)
- 仮ボルト締め・本締め
- 高力ボルト締結作業(トルクレンチ使用)
- ランディング作業(高所での受け取り)
- ガス溶断作業(柱の調整等)
- 鉄骨間のデッキプレート敷設
3. 仮設・支保工関連作業
- 支保工の組立・解体(コンクリート打設時など)
- 型枠支保の設置補助
- 鉄筋工・型枠工との連携作業
4. 機械・資材揚重作業
- ホイストの設置・操作
- クレーンへの合図(手信号・無線)
- 玉掛け作業(資格必須)
- 建設資材の搬入・搬出補助
5. 安全対策・点検
- 足場の点検(日常点検・定期点検)
- 高所作業時の安全帯・フルハーネス装着確認
- 墜落防止措置の設置確認
- KY(危険予知)活動への参加
- 作業開始前の安全ミーティングへの参加
6. 解体・撤去作業
- 足場・鉄骨・仮設物の解体
- 撤去材の整理・仕分け・積込み
- 廃材の搬出補助
7. その他周辺作業
- 作業後の清掃・片付け
- 資材置き場の整理整頓
- 重量物の手運び(小規模現場など)
- 作業道具の点検・整備
- 現場監督との打合せ・指示受け
外国人が従事できる「とび」の範囲とは?
外国人が従事できる「とび」の作業範囲は、制度ごとに定められた基準に沿って決まっています。
足場の組立・解体、鉄骨の建方、玉掛け作業、仮設支保工の組立などが主な対象で、これらは技能実習・特定技能ともに認められています。
ただし、ガス溶断やクレーン操作など一部の作業は対象外です。
作業範囲を正しく把握することで、違反のリスクを避け、安全かつ適正な雇用が可能になります。
在留資格と必要な手続き
外国人をとび職として雇用するには、適切な在留資格の取得と、それに伴う各種手続きが必要です。
技能実習の場合は監理団体との連携、実習計画の認定、入国管理局への申請が求められます。
特定技能では、技能評価試験と日本語試験の合格後に雇用契約を結び、在留資格変更または新規取得を行います。
いずれの制度も、手続き不備があると入国や就労が認められないため、慎重な対応が必要です。
2.外国人が従事可能なとび作業一覧
外国人が従事できるとび作業は、制度で明確に定められています。
足場の組立・解体、鉄骨建方、玉掛け作業、仮設支保工の補助など、現場での主要な作業が含まれます。
この章では、実際に従事可能な作業を一覧でわかりやすく紹介します。
【外国人技能実習・特定技能で従事可能なとび作業一覧】
※技能実習制度:「とび」職種は3号技能実習まで移行可能な対象職種です。
※特定技能制度:建設分野の「とび」作業に分類される業務に従事可能です。
1. 足場関連作業(可能)✅
- 枠組足場の組立・解体
- 単管足場の組立・解体
- 吊り足場の設置・撤去
- 次世代足場(くさび式等)の組立・解体
- 移動式足場(ローリングタワー)の設置・操作
- 足場部材の運搬・積み下ろし
- 墜落防止設備(親綱、安全ネット)の設置
2. 鉄骨建方作業(可能)✅
- 鉄骨部材の荷下ろし・仮置き
- 玉掛け作業(※要資格:技能講習修了)
- 揚重機への合図(※熟練が必要、指導下で)
- 鉄骨の建方(柱・梁の組立)
- 仮ボルト・本締め作業
- 高力ボルトの締結(トルクレンチ使用)
- ランディング(高所での部材受け取り)
- 鉄骨間のデッキプレート敷設
3. 仮設・支保工関連作業(可能)✅
- 支保工の組立・解体
- 型枠支保の補助作業
4. 機械・資材揚重作業(一部可能)⚠️
- 玉掛け作業(※要資格)
- クレーン合図(※必要に応じ実施)
- ホイスト設置・操作(※内容により制限あり)
- 資材の搬入・搬出補助
※一部の機械操作は、特別教育または技能講習が必要で、作業範囲に制限がある場合があります。
5. 安全対策・点検(補助的に可能)⚠️
- 墜落防止措置の設置補助
- 安全帯やフルハーネスの着用・管理
- 日常的な足場の点検補助
- KY活動・朝礼への参加
※現場の責任者・日本人職長が主導。外国人は補助的立場で参加。
6. 解体・撤去作業(可能)✅
- 足場・仮設物の解体作業
- 鉄骨等の撤去補助
- 撤去材の仕分け・搬出補助
7. その他作業(可能)✅
- 作業後の清掃・片付け
- 資材置場の整理整頓
- 道具の点検・整備補助
- 指示受け・連絡伝達(※N4程度の日本語力必要)
❌【従事不可または制限のある作業】(参考)
- ガス溶断(※アーク溶接・ガス溶断作業は通常対象外。別職種)
- クレーン運転操作(※資格と許可必要。技能実習対象外)
- 現場監督や責任者的立場での作業指示
補足
制度 | 対象職種 | 在留期間上限 | 主な条件 |
技能実習 | とび(職種コード:22) | 最大5年(3号まで) | 技能検定合格必須(随時3級→2級) |
特定技能1号 | 建設分野「とび」作業 | 最大5年 | 技能評価試験(とび)+ 日本語能力N4相当 |
足場の組立・解体に関する作業
足場の組立・解体は、とび職の中心的な作業であり、外国人技能実習生や特定技能外国人も従事可能です。
枠組足場、単管足場、吊り足場、くさび式足場など、多様な足場の設置・撤去に対応できます。
作業には高所での安全確保が求められるため、フルハーネスの使用や親綱の設置など、安全管理の指導も重要です。
正しい知識と手順を身につけることで、安全かつ効率的に現場作業へ貢献することができます。
鉄骨建方・揚重作業などの主力業務
鉄骨建方や揚重作業は、とび職の中でも特に重要な主力業務であり、外国人労働者も一定の条件下で従事可能です。
鉄骨の柱や梁の設置、仮ボルト・本締め作業、デッキプレートの敷設などが含まれます。
また、玉掛け資格を有していれば、クレーンによる部材の吊り上げにも関与できます。
これらの作業は高所かつ重量物を扱うため、安全意識と的確な指示理解が不可欠で、作業前の教育や訓練がとても重要です。
安全管理や支保工補助などの補助業務
外国人とび職が従事できる業務には、安全管理や支保工の補助といったサポート的な作業も含まれます。
たとえば、親綱や安全ネットの設置補助、フルハーネスの着用確認、作業前の点検・清掃など、安全を支える作業は現場で欠かせません。
また、コンクリート打設時の型枠支保工の組立・解体補助も重要な役割です。
これらの作業は、現場全体の安全と作業効率を高めるために必要で、外国人労働者の活躍の場となっています。

3.雇用現場での注意点と実務対応
外国人とび職を雇用する際は、日本語能力や安全教育の充実が重要です。
また、労務管理や法令遵守を徹底し、円滑なコミュニケーションと安全な作業環境を整えることが求められます。
日本語力と現場でのコミュニケーション
とび職で外国人を雇用する際、日本語力は安全管理や作業指示の理解に直結する重要な要素です。
最低でも日本語能力試験のN4レベル程度が望ましく、簡単な指示や注意事項を理解できることが求められます。
現場では安全確認や危険予知活動(KY活動)など、迅速かつ正確なコミュニケーションが不可欠です。
そのため、専門用語や安全用語の教育に加え、身振り手振りを交えた指導や多言語マニュアルの活用など、言語の壁を乗り越える工夫が必要です。
円滑な意思疎通が現場の安全と効率向上に直結します。
技能講習・特別教育の必要性
とび職で外国人労働者が安全かつ適正に作業を行うためには、技能講習や特別教育の受講が欠かせません。
足場組立や玉掛けなど、一部の作業は法令で定められた資格取得が必須です。
これらの講習は作業の基礎知識や安全管理、危険防止の方法を習得する機会となり、事故防止に直結します。
また、外国人には日本語での理解が難しい場合もあるため、多言語対応の教材や通訳の活用も重要です。
事業者は教育体制の整備を通じて、現場の安全確保と労働者の技能向上を支援する責任があります。

労務管理・安全衛生への配慮
外国人とび職の労務管理では、労働時間の適正管理や健康状態の把握が重要です。
長時間労働や過重労働を避けるため、タイムカードや出勤簿の正確な記録が求められます。
また、安全衛生面では、作業環境の整備や安全教育の徹底が不可欠です。
外国人特有の言語や文化の違いに配慮し、わかりやすい指導や多言語マニュアルの活用が効果的です。
さらに、定期的な健康診断やメンタルケアも取り入れ、安全で働きやすい職場づくりを進めることが求められます。
外国人とともに安心・安全な現場づくりを
外国人労働者とともに安心・安全な現場をつくるには、制度の理解と適切な教育、安全管理が不可欠です。
相互理解と配慮を深め、トラブル防止と円滑な作業環境の実現を目指しましょう。
制度を理解し、受け入れ体制を整えることが成功のカギ
外国人とび職を雇用し現場で活躍してもらうためには、まず技能実習や特定技能などの制度を正しく理解することが重要です。
制度ごとに求められる要件や作業範囲、在留資格の手続きなどを把握し、適切な受け入れ体制を整えることが成功のカギとなります。
また、日本語教育や安全教育、労務管理の充実も不可欠です。
これらを整えることで、外国人労働者の早期戦力化と定着率向上、ひいては現場全体の生産性と安全性の向上につながります。
企業と労働者双方にとって安心できる環境づくりが求められます。