特定技能の「工業製品製造業分野」(素形材産業分野を除く)の中で外国人雇用が出来る事業とは?
本記事では、特定技能「工業製品製造業分野」において外国人雇用が可能な事業について解説します。対象となる業種や具体的な作業内容、受入れのポイントをわかりやすく紹介し、企業が適切に外国人材を活用するための基礎知識を提供します。
1.工業製品製造業分野とはどのような分野か?
工業製品製造業分野とは、機械・電気・電子機器などの製造工程において、主に組立や検査、梱包などを行う業務が含まれる分野です。
製造業の中でも加工・組立型の製品を扱う業種が中心で、特定技能1号では、これらの現場で即戦力となる外国人材の受入れが可能とされています。
特定技能の製造業3分野とその位置づけ
特定技能における製造業分野は、「素形材産業分野」「産業機械製造業分野」「電気・電子情報関連産業分野」の3つに分かれ、これらを総称して「製造3分野」と呼びます。
いずれも日本のものづくりを支える重要な分野であり、人手不足が深刻な領域です。
各分野には対象となる業種や作業内容が定められており、特定技能1号として外国人を受け入れる際には、それぞれの分野の定義と業務範囲を正しく理解することが必要です。
特に工業製品製造業分野は、これら3分野の横断的な性質を持ち、幅広い業種が対象となるのが特徴です。

工業製品製造業分野の対象となる業種の特徴
工業製品製造業分野の対象業種は、主に機械、電気機器、電子部品、輸送用機器などの組立・加工型製造業が中心です。これらの業種では、製品の部品製造から組立、検査、梱包といった工程が多く、一定の作業手順に基づいて行う反復的な業務が多いため、外国人材の受入れに適しています。特に、製品の高精度化や多品種少量生産が進む中で、現場作業の担い手として即戦力となる人材確保が求められています。対象業種は日本標準産業分類により明確に定められています。
この分野で求められる外国人材の役割とは
工業製品製造業分野では、製造ラインにおける機械操作、部品の組立、製品の検査、梱包作業などが中心で、正確かつ安定した作業を担える人材が求められます。
特に人手不足が深刻な中小企業では、外国人材が現場の生産性を維持するために不可欠な存在となっています。
また、技能実習で得た経験を活かし、特定技能として即戦力として活躍できることも期待されています。
将来的には日本人従業員との協働や、簡単な作業指導を行う場面も増えることが見込まれています。
2.対象となる事業所の分類と確認方法
工業製品製造業分野で外国人を雇用するには、事業所が対象業種に該当している必要があります。
判断の基準となるのは、総務省の日本標準産業分類で、該当する4桁の分類コードが定められています。
事業所の登記内容や定款、実際の事業内容と照らし合わせて、正確に確認することが重要です。

日本標準産業分類における対象業種一覧
✅ 工業製品製造業分野(素形材を除く)対象分類一覧(4桁)
以下は素形材産業(225系、235系、2194、245等)を除いた分類で、かつ工業製品製造業分野と認定されるものです:
分類コード | 分類名 |
11 | 繊維工業 |
141 | パルプ製造業 |
1421 | 洋紙製造業 |
1422 | 板紙製造業 |
1423 | 機械すき和紙製造業 |
1431 | 塗工紙製造業(印刷用紙を除く) |
1432 | 段ボール製造業 |
144 | 紙製品製造業 |
145 | 紙製容器製造業 |
149 | その他のパルプ・紙・紙加工品製造業 |
15 | 印刷・同関連業 |
18 | プラスチック製品製造業 |
2123 | コンクリート製品製造業 |
2142 | 食卓用・ちゅう房用陶磁器製造業 |
2143 | 陶磁器製置物製造業 |
2211 | 高炉による製鉄業 |
2212 | 高炉によらない製鉄業 |
2221 | 製鋼・製鋼圧延業 |
2231 | 熱間圧延業(鋼管、伸鉄を除く) |
2232 | 冷間圧延業(鋼管、伸鉄を除く) |
2234 | 鋼管製造業 |
2291 | 鉄鋼シャースリット業 |
2299 | 他に分類されない鉄鋼業(ただし、鉄粉製造業に限る。) |
2422 | 機械刃物製造業 |
2441 | 鉄骨製造業 |
2443 | 金属製サッシ・ドア製造業 |
2446 | 製缶板金業(ただし、高圧ガス用溶接容器・バルク貯槽製造業に限る。) |
2461 | 金属製品塗装業 |
2462 | 溶融めっき業(表面処理鋼材製造業を除く) |
2464 | 電気めっき業(表面処理を除く) |
2469 | その他金属表面処理業(アルミ陽極酸化処理に限る) |
248 | ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業 |
2499 | 他に分類されない金属製品製造業(ただし、ドラム缶更生業に限る。) |
25 | はん用機械器具製造業(ただし2591除く) |
26 | 生産用機械器具製造業 |
27 | 業務用機械器具製造業(ただし274・276を除く) |
28 | 電子部品・デバイス・電子回路製造業 |
29 | 電気機械器具製造業(ただし2922除く) |
30 | 情報通信機械器具製造業 |
3299 | 他に分類されない金属製品製造業(ただし、ドラム缶更生業に限る。) |
484 | こん包業 |
代表的な対象業種とその具体例
工業製品製造業分野で特定技能外国人の受入れが可能な代表的な業種には、電子部品製造業、電気機械器具製造業、自動車部品製造業、一般機械器具製造業などがあります。
たとえば、電子機器の組立、配線、半導体製造装置の部品加工、冷蔵・空調機器の組立、自動車の内装部品やワイヤーハーネスの製造などが該当します。
これらの業種は、高精度かつ反復性の高い作業が多く、外国人材が習熟しやすい環境が整っています。
現場では、作業マニュアルに基づく手順通りの工程管理が重視され、安定した品質の確保に外国人の力が期待されています。
事業所が受入れ可能か判断する際の注意点
工業製品製造業分野で外国人材を受け入れる際には、まず自社の事業内容が日本標準産業分類の対象業種に該当しているかを確認することが重要です。
会社登記の業種名だけで判断するのではなく、実際に行っている業務内容が対象となる作業と一致しているかを重視する必要があります。
また、製造出荷額が一定割合以上あるか、材料を自社で所有して加工しているかといった要件も確認対象です。
さらに、分野別協議会への加入や、適正な労務管理体制の整備も受入れの条件となるため、制度全体を理解した上で準備を進める必要があります。
✅ 産業分類の調べ方(日本標準産業分類コードの確認方法)
- 総務省「日本標準産業分類」公式サイトで確認
→ https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/index.htm
ここで業種名やキーワードから分類コード(4桁)を検索できます。 - 自社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)で業種確認
→ 「製造業」「機械器具製造業」など記載されている業種と照合。 - 経済産業省・出入国在留管理庁の告示資料で対象分類を確認
→ 例:外国人材制度ポータル(https://www.sswm.go.jp)などに掲載。 - 顧問社労士や登録支援機関に相談
→ 実際の業務内容に基づいて該当区分の判断を支援してもらうのが確実です。
✅ 受入れ時に必要となる主な確認書類の例
書類名 | 目的・使用場面 |
登記簿謄本(履歴事項全部証明書) | 事業所の法人格や業種の確認に使用 |
定款 | 会社の目的欄に記載された事業内容の確認 |
工場パンフレットや会社案内 | 実際の業務内容や製造品目の説明用として提出可能 |
直近の決算書類(売上構成) | 製造出荷額など業務割合の説明資料として活用 |
製造工程のフローチャートや作業指示書 | 対象作業(組立・検査等)を行っていることの証明資料 |
事業所で製造している製品の写真・説明資料 | 対象業務の具体例として提示可能 |
3.実際に行える作業と現場での対応
工業製品製造業分野で外国人材が実際に行う作業は、部品の組立、機械操作、製品検査、梱包など多岐にわたります。
これらは手順が明確で反復的な業務が多く、一定の技能と日本語能力があれば円滑に対応可能です。
企業は作業指導や安全管理、生活支援を整え、外国人材が働きやすい環境づくりを進めることが求められます。
対象となる作業内容の具体例(組立・検査など)
工業製品製造業分野で外国人が携わる具体的な作業内容には、製品や部品の組立作業が代表的です。
例えば、自動車の内装部品や電子機器の配線組立、機械部品のはめ込みなど、正確な手順に沿った作業が求められます。
また、完成品や中間製品の検査作業も重要で、外観チェックや動作確認など品質を保つ役割を担います。
さらに、梱包や出荷準備などの工程も含まれ、これらは反復性が高く習熟しやすい作業が多いのが特徴です。
これらの業務は一定の技能と日本語コミュニケーション能力があれば、外国人材がスムーズに対応できるため、受入れ企業にとっても導入しやすい分野となっています。
外国人材に求められるスキルや日本語レベル
工業製品製造業分野で求められる外国人材のスキルは、正確な作業手順の理解と実践が基本です。
機械操作や組立、検査といった反復的な作業をミスなくこなせる能力が重視されます。
また、安全衛生の知識や職場ルールの遵守も必須です。
日本語レベルは、日常会話程度(おおむね日本語能力試験N4~N3相当)が求められ、作業指示や報告、簡単なコミュニケーションが円滑に行えることが望まれます。
これにより、職場でのチームワークやトラブル防止にもつながります。

企業側に求められる体制整備とサポート例
外国人材を受け入れる企業には、適切な労務管理体制の整備が求められます。
具体的には、作業指導や安全教育をわかりやすく行う体制の構築、言語や文化の違いを踏まえたコミュニケーション環境の整備が重要です。
また、生活面の支援として住居手配や生活相談窓口の設置、定期的なフォローアップ面談を実施することも効果的です。
さらに、トラブル予防のための相談体制の整備や日本語学習支援も含め、外国人材が安心して働ける職場環境づくりが企業の責務となっています。
分野の正しい理解が円滑な外国人雇用への第一歩
特定技能の工業製品製造業分野で外国人材を受け入れるには、分野の対象業種や作業内容を正しく理解することが不可欠です。
これにより、適切な事業所の選定や効果的な受入れ体制の構築が可能となり、トラブルの防止や定着率向上につながります。
円滑な雇用の第一歩は、制度と現場の両面をしっかり把握することです。
事業内容と制度を照らし合わせて、計画的な受入れを
外国人材を円滑に受け入れるためには、自社の事業内容と特定技能制度の要件を正確に照らし合わせることが不可欠です。
日本標準産業分類に基づく対象業種の確認はもちろん、実際の製造工程や作業内容が制度で定められた範囲に適合しているかを慎重に判断する必要があります。
また、受入れ後の労務管理や安全衛生対策、生活支援体制の整備も計画的に進めることが重要です。
これにより、制度違反のリスクを避け、外国人材が安心して長期的に活躍できる環境を構築できます。
計画的な準備と理解が、成功する外国人雇用の鍵となります。