特定技能「素形材産業分野」の鍛造業(たんぞう業)で外国人雇用する方法
特定技能制度により、鍛造業でも外国人材の雇用が可能になりました。本記事では、制度の概要から必要な手続き、受入要件、現場での定着支援までをわかりやすく解説します。
1.特定技能制度と素形材産業分野の基礎知識
特定技能制度は、人手不足が深刻な産業分野で外国人が就労できる制度です。
素形材産業分野は、その対象の一つで、鋳造・鍛造・ダイカストなどを含みます。
これらの現場では、一定の技能と日本語能力を備えた外国人材の活用が期待されています。
✅ 鍛造業で外国人が就労できる主な職種・作業一覧(特定技能1号)
1. ハンマーダイ鍛造作業
・スチームハンマー、エアードロップハンマー等を用いた鍛造作業
・金型の交換や調整作業も含む
2. プレスダイ鍛造作業
・鍛造プレス機を用いた熱間鍛造、温間鍛造、冷間鍛造
・部品の投入・取り出しやバリ取り等の補助作業も含む
3. 自由鍛造作業
・ハンマーやプレス機を用いて、金型を使わずに素材を加工
・大型部品の成形等、手作業と機械操作の両方を伴う
4. 熱処理作業(※鍛造後工程として)
・焼入れ、焼戻し、焼なましなどを行う加熱・冷却工程
・炉の操作や温度管理などの作業
5. 機械加工(仕上げ)作業
・鍛造品の寸法仕上げ・バリ取り・面取り等の二次加工
・グラインダーやNC機械の操作も含まれることがある
6. 製品検査・品質管理補助
・外観検査、寸法測定、強度確認など、製品の品質チェック補助
🔍 注意点:
- 上記は「特定技能評価試験(鍛造)」に合格した外国人が従事可能な作業です。
- 上記作業に従事させるためには、該当作業を行っていることが明確な企業である必要があります。
- 技能実習2号良好修了者も、同等の職種に移行可能です。
特定技能制度とは何か?
特定技能制度とは、日本国内の深刻な人手不足を補うために創設された在留資格制度で、一定の技能と日本語能力を有する外国人が就労できる仕組みです。
2019年に導入され、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2区分があります。
特定技能1号では、介護・建設・素形材産業など14分野で就労が可能で、在留期間は通算5年まで。
技能試験と日本語試験に合格することが必要で、受入企業には支援体制の整備も求められます。

素形材産業分野に含まれる業種とは?
素形材産業分野とは、金属や樹脂などの素材を用いて、製品の「形」を作る基盤的な製造業を指します。
具体的には、鋳造、鍛造、ダイカスト、金属プレス加工、機械加工、仕上げ、工業用モデル製作、電気めっき、溶射、熱処理、研削研磨などが含まれます。
これらの業種は、自動車・機械部品・建材など幅広い分野で活用される重要な製造工程であり、特定技能制度の対象として外国人材の受入れが認められています。
鍛造業での就労に必要な技能水準
鍛造業で特定技能外国人として就労するには、一定の技能水準と日本語能力が求められます。
具体的には、「素形材産業分野特定技能1号評価試験(鍛造)」に合格する必要があります。
この試験では、ハンマー鍛造やプレス鍛造などの基本作業に関する知識と実技能力が評価されます。
また、日本語については「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」の合格が必要で、職場での基本的な会話ができるレベルが求められます。
2.鍛造業で外国人を雇用するまでの手続きと要件
鍛造業で外国人を特定技能で雇用するには、評価試験に合格した人材を対象に、受入計画の作成・認定申請を行う必要があります。
企業は労務管理や生活支援体制の整備が求められ、登録支援機関との連携も重要です。

受入企業が満たすべき条件とは?
鍛造業で特定技能外国人を雇用するには、受入企業が一定の基準を満たす必要があります。
まず、外国人と適切な労働契約を締結し、日本人と同等以上の報酬を保証することが求められます。
また、労務管理体制を整え、就労や生活面での支援体制を確保する必要があります。
さらに、技能実習で不適正な対応があった企業や過去に法令違反がある場合は、受入れが認められないこともあります。
継続的な支援体制とコンプライアンスの遵守が重要です。
必要書類と提出先の整理
特定技能で外国人を鍛造業に受け入れる際には、受入企業は「特定技能所属機関」として出入国在留管理局へ複数の書類を提出する必要があります。
主な書類には、雇用契約書、支援計画書、受入計画書、技能評価試験および日本語試験の合格証明書、企業の登記事項証明書や決算書類などがあります。
提出先は事業所所在地を管轄する地方出入国在留管理局で、書類の不備や内容不適合があると審査が通らないため、正確かつ丁寧な準備が求められます。
登録支援機関との連携方法
特定技能外国人を受け入れる際、受入企業は生活支援や各種手続きのサポートを行う必要がありますが、自社で対応が難しい場合は「登録支援機関」と連携することが可能です。
登録支援機関は、住居探しや役所手続き、生活相談、日本語支援など多岐にわたる支援業務を代行します。
連携にあたっては、支援計画を作成し出入国在留管理局に提出・認定を受ける必要があり、支援内容の報告義務もあります。
円滑な連携により外国人材の定着やトラブル防止が期待されます。

3.鍛造業での外国人雇用を成功させるためのポイント
鍛造業で外国人雇用を成功させるには、現場での丁寧な技術指導や日本語支援、生活面でのサポート体制が不可欠です。
文化や習慣の違いを理解し、職場環境を整えることで定着率が向上します。
現場での教育と技能継承体制の構築
鍛造業における外国人雇用の成功には、現場での教育体制が重要です。
技能継承のためには、経験豊富な指導者を配置し、段階的かつ具体的な指導計画を立てることが求められます。
OJT(職場内訓練)を通じて実践的な技術を身につけさせるほか、作業マニュアルや動画教材の活用も効果的です。
また、日本語によるコミュニケーション能力向上も図り、指導の理解度を高めることが定着と品質向上に繋がります。
継続的なフォローアップ体制も整え、安心して働ける職場環境を作ることが大切です。
生活支援と地域との関係づくり
外国人材が安心して生活し、長く働き続けるためには、職場だけでなく地域社会との良好な関係づくりが欠かせません。
住居の手配や生活必需品の購入支援、多言語での情報提供を行うことで生活面の不安を軽減できます。
また、地域のイベント参加や交流会の開催を通じて、外国人と地域住民が交流する機会を設けることも重要です。
こうした取り組みは孤立感を防ぎ、文化理解を深めることで、定着率向上やトラブル防止にもつながります。
企業は地域の自治体や支援団体と連携し、包括的な支援体制を整えることが求められます。

文化・宗教への配慮とトラブル予防
外国人材の多様な文化や宗教背景を理解し、配慮することは、職場の円滑な運営に不可欠です。
例えば、宗教上の食事制限や礼拝時間への配慮、祝祭日の違いを尊重することで、従業員の安心感を高められます。
また、コミュニケーションの齟齬や労務トラブルを未然に防ぐため、明確な就業ルールの周知や相談窓口の設置が重要です。
定期的な面談やアンケートで問題を早期に把握し、迅速に対応する体制を整えることで、職場環境の安定と外国人材の定着につながります。
鍛造業における外国人材活用の未来
鍛造業における外国人材の活用は、人手不足解消と技術継承の両面で重要な役割を果たします。
特定技能制度を活用し、適切な教育と支援を行うことで、持続可能な生産体制の構築が期待されます。
人材確保と技術継承の両立を目指して
鍛造業界では深刻な人手不足が続く中、外国人材の活用が不可欠となっています。
一方で、高度な技術継承も同時に求められており、この両立が課題です。
特定技能制度を活用し、外国人材に対して計画的かつ体系的な技能教育を行うことで、現場の技術水準を維持・向上させることが可能です。
また、日本人熟練技術者との連携を強化し、ノウハウ共有や相互理解を深めることで、技術伝承の質を高められます。
これにより、持続可能で競争力のある鍛造業の未来を築くことが期待されています。